土地の有効活用講座
定期借地権マンション研究会の活動報告(7回連載)

7.定期借地権マンションにかかる法的な課題(2010.1.5掲載)

アンケート調査等を行いながら、平行して定期借地権マンションにかかる契約書や重要事項説明書等を手に入れることができたので、各社の定期借地権設定契約についての簡単な分析を行ったところ、特徴的な点としては以下のような状況であった。

1)契約書等の内容の相違について

<1> 賃料債務の性質について
可分債務としている事例4例
不可分債務としている事例1例
賃料債務について何の規定もない事例1例

<2> 区分所有者間の賃料の帰属について
各人が土地所有者の指定する口座に振り込む等5例
管理組合が、土地所有者に賃料総額を支払う1例

<3> 解約の解除(借地人の用法違反や賃料の支払い延滞の場合の措置について)
違反者の区分所有権・土地準共有持分権は無償で土地所有者に帰属するものとし、契約から一定期間内(例:6月以内)に専有部分の評価をして、評価額から、借地人の債務・違約金(例:賃料の12月相当)を控除した残額を借地人に支払うとする例4例
用法違反を「債務不履行」と規定し、是正・催告に応じない場合には、土地所有者が区分所有権・敷地利用権を有償で売り渡すことを請求でき、借地人はこれに応じなければならないとするもの1例
全区分所有者が、是正・催告に応じない場合には、全区分所有者に対して区分所有権及び借地権の潤共有持分を有償で請求でき、全区分所有者はこれに応じなければならないとするもの1例

<4> 増改築・再築
単に、「乙(借地人)は、その旨を書面で甲(土地所有者)に対して通知し、再建築をすることができる。」とするもの2例
「建替えの場合は建替え決議を行った上で、増改築等についても「集会決議」を行った上で土地所有者の同意を得て建替え等ができる。なお、建替え決議等の集会を行う前に、計画の内容は土地所有者に通知する。」とするもの2例
上記bの後段がないもの2例

<5> 明渡し
杭も含め全て撤去3例
基礎杭は地下5mまで撤去、地下遊水地は撤去不要1例
基礎杭は地下2mまで撤去2例

*なお、無償譲渡特約を入れている例は1例

<6> 解体積立金
契約書上規定がないケース2例
管理組合法人を設立し、管理組合法人が預託を受け運用する。1例
解体準備金は、管理組合の金融機関の口座に積みたてる。1例
解体積立金は、当初は分譲会社に預託し、管理組合法人が設立された時点で分譲会社から管理組合法人に引渡す。1例
管理組合が管理し、土地所有者が質権設定で保全する。1例

*なお、bの例では、解体積立金を国債等で運用することとし、当該債権について土地所有者が質権を設定する等の規定までなされている。

2)その他留意すべきと思われる事項等

<1> 敷金
敷金について、「賃料が増額された場合に、不足分を追加預託する(逆に賃料が減額された場合には、減額措置は講じない)」旨の規定がなされている例が1例あった。このケースでは、追加預託をする場合の基準を、「当初設定された賃料額の1.1倍を超えた場合」としている。また、文献によっては「賃料の増減のたびに、預託敷金の清算を行う」旨の規定をする事例がある。
敷金の清算は、比較的手間のかかるものであるため、敷金額を多少多めに設定しても(例:30月等)、賃料改定による清算は行わないとする考え方もあると思われる。

<2> 期間内解約
建物の滅失等の場合に、借地人全員の合意で、土地所有者に対して、解約の申出ができるとする項目は全ての借地契約書に記載されている。この場合の、申し出から借地契約終了までの期間は、「1年を超えないものとする。」、「2年を超えないものとする。」、「3年を超えないものとする。」等の例がある。