土地の有効活用講座
定期借地権マンション研究会の活動報告(7回連載)

4.定期借地権マンションの物件調査結果の概要(2009.10.1掲載)

1)調査対象
<1>平成14年~平成19年にかけて分譲された首都圏の定期借地権マンションを対象とした。
<2> 物件については、主として不動産経済研究所等の資料をもとに、当該期間に分譲された物件を特定した。

2)概況
<1> 土地所有者
・個人 7件
・デベロッパー(含む関係会社) 3件
・一般法人 4件
・公益法人 2件
・自治体、UR 3件

<2> 所在地
東京都内 中央区 品川区 計13物件
新宿区 八王子市
渋谷区 国分寺市
目黒区 稲城市
世田谷区  
神奈川県内 横浜市 川崎市 計 4物件
千葉県内 船橋市 浦安市 計 2物件

<3> 平成20年時点の路線価
正面路線価 物件数 個人地主所有
140万円超~160万円
120万円超~140万円
100万円超~120万円
80万円超~100万円
60万円超~ 80万円
40万円超~ 60万円
20万円超~ 40万円
10万円超~ 20万円

 定期借地マンションについては、相続税対策面で個人地主には不利であるといわれている(路線価がC地区~G地区においては、定期借地権設定当初は45%~25%の評価減がなされるが、一般にマンションに供される土地は面積が広く路線価も比較的高い地区が多いことが想定されるため、評価減後においてもまとまった相続税が発生すると考えられるため)が、現実には個人所有地における事業化例も比較的多い状況であった。
 もっとも、実際の分譲物件について、平成20年時点の路線価を見てみると、かなり高額な地区(最高額は157万円/㎡)から、比較的割安な地区(最低額は13.5万円/㎡)までかなりのバリエーションがある。なお、個人地主の所有地の最高路線価は68万円であり、相対的には比較的路線価の安い土地で供給されている傾向は読み取ることができる。
 なお、個人所有地について、平成20年の路線価と面積を乗じた結果は、下記の表の通りである。

単位:万円
  更地評価 借地権割合
Aマンション 56,267 60%
Bマンション 59,939 60%
Cマンション 58,020 60%
Dマンション 48,909 70%
Eマンション 36,123 60%
Fマンション 31,128 60%

 定期借地権マンションに土地を供しているため、少なくとも他に自宅は所有していると思われるため、相続の際には相当な相続税が発生すると思われるが、納税対策等をどのように考えているかは不明である。可能であれば、本年度以降も、引き続きこうしたステークホルダーに対してヒアリングをかけながら、検証を行ってゆきたい。

<4> 借地権の権利形態と一時金のタイプの相関関係

国土交通省の調査等においては、最近の定期借地権マンションの傾権よりは地上権型のタイプが、また一時金としては保証金よりも権利金とする傾向が強まっているようにも見受けられる。ここでは向としては、賃借、19物件について、借地権の形態と一時金のタイプで分類を行ってみる。

権利形態 一時金のタイプ 事例数
賃借権 保証金
権利金
保証金+権利金
その他
不明
地上権 保証金
権利金
保証金+権利金
前払い賃料
不明
転借権 保証金
権利金
不明

以上の通り、権利設定・一時金ともに相当なバリエーションがあるが、傾向とすれば、権利は「地上権」型が中心となっていることがわかるが、一時金については、保証金のケースも比較的多く見受けられる。具体的には、土地所有者のニーズにより様々な工夫をしているというところが実態であろう。
 こうしたことからも、定期借地権マンションは、「土地活用事業」の一環として提案されていることが推定されるし、また定期借地権マンションの提案をしてゆくためには、一定のコンサルティングが必要とされることが想定される。