土地の有効活用講座
定期借地権マンション研究会の活動報告(7回連載)

2.定期借地権マンションを取り巻く概況(2009.8.3掲載)

 昨今の定期借地権付住宅の供給を見ていると、一戸建て住宅の供給は大きく減少しておりますが、マンションの供給は比較的安定しているものと思われます。国土交通省の調査によると、平成19年末までに定期借地権付マンションは、16,780戸が供給されております。

 現実には、これまでにわが国で供給された分譲マンションの総数は、528万戸(平成19年末時点の推計値)といわれておりますので、マンション供給全体の中に占める定期借地権付マンションの割合は、微々たるものに過ぎませんが、一方で、定期借地権を利用した結果、さまざまなバリエーションのマンションの供給もなされております。

 たとえば、立地特性で考えると、「都心型」と「郊外型」に分けることができます。都心型のマンションについては、公益法人や地方自治体の所有地の活用のケースが多く、価格も所有権マンションに近い水準のものも見受けられます。こうした一等地においては、所有権であるか定期借地権であるかに関わらず、当該地で一定品質以上のマンションの供給がされることに意義があると考えられます。

 一方で、郊外型の定期借地権マンションについては、「土地は借りているため、土地価格が顕在化されない・・・結果として所有権マンションよりは安い価格で物件の供給ができる」という特色を前面に出した企画が基本です。但し、その「割安さ」の訴求について、大きく二つの考え方に分かれます。

 第一は、「価格の安さ」を全面的に訴求する手法です。この場合、「同じ70平方メートルでも、周辺の所有権マンションよりも20%~30%割安でマンションが取得できる」というような宣伝文句となるでしょう。もうひとつの考え方は、「面積の広さ」を訴求する手法です。この場合は「70平方メートルの所有権マンションの取得額で、90平方メートルのマンションに住むことができる」という宣伝文句となるでしょうか。

 また、「企画」面でも、さまざまな工夫が凝らされているケースがあります。その典型的な事例として「つくば方式」の定期借地権マンションをあげることができます。これは22条の定期借地権に24条の建物譲渡付借地権を組み合わせた概念であり、現在までにこの手法をとった定期借地権マンションは既に10棟以上供給されております。また、築70年を超えた建物をリノベーションした上で、定期借地権付マンションとして分譲するような事例も出ております。

 このようにマンション分譲の面を考えても、定期借地権の利用をすることで、さまざまな物件を創出できる可能性があることがお分かりいただけると思います。