土地の有効活用講座
定期借地権設定契約上の留意点(5回連載)

■その5 -- 保証金について(2009.2.2掲載)
定期借地権付き一戸建て住宅の分譲に際しては、借地権設定時の一時金については、「保証金」の授受をするケースが圧倒的に多い状況ですし、定期借地権付きマンションや事業用借地権においても、保証金の授受をするケースは多く見受けられます。ここでは、保証金について考えて見ましょう。
1)保証金返還請求権にかかる抵当権設定

保証金は、契約期間終了まで地主に預託する金銭です。特に一般定期借地権を考えると、契約期間は50年以上にわたることから、50年後に預託した保証金が土地所有者から返還されるか否かは確定できません。こうしたことから、特に高額の保証金の預託をする場合には、保証金返還請求権を担保するため保証金額を債権額とした抵当権の設定登記を行なう手法を講じるケースが多くなっております。
2)保証金の預託にかかる契約上の意味合い

定期借地権設定契約においては、土地に対しての定期借地権の設定とともに保証金の預託についても定めていることが多くありますが、本来は「定期借地権の設定」の契約と「保証金の寄託」の契約は別々の契約となります。たまたま、定期借地権の設定契約時に二つの契約が一つの契約書の中で交わされているだけです。そのため、借地人が定期借地権を第三者に売却する場合には、借地契約にも何の定めもなく、また売却に際しても保証金について何らの取り決めもない場合には、「定期借地権は第三者に譲渡されたけれど保証金返還請求権は従前借地人に帰属する」などという事態が生じる可能性も考えられます。
或いは、定期借地権を設定した地主(底地権者)が、土地を第三者に譲渡した場合においても、こうした取り決めがないと、借地期間満了時には借地人が保証金の返還を請求するのはその時点の地主ではなく、当初の地主になりかねません。こうしたことを防ぐ意味でも、定期借地契約上、定期借地権や底地が第三者に譲渡された場合における、保証金にかかる債権債務の取り扱いについて十分な取り決めをされておく必要がありますし、借地権や底地権の譲渡契約においてもこうした事項についてしっかり取り決めておかれる必要があるでしょう。
3)定期借地権設定登記と保証金返還請求権の抵当権の設定時期の関係

なお、借地人が借入金で建築を行なうような場合には、土地上の建物の表示保存登記(及び定期借地権設定登記)と建物に対して借地人が債務者となる抵当権設定登記をした上で保証金返還請求権の抵当権設定登記を行なうようになると思われます。これは、土地に抵当権が設定されている借地権について、借地人が建築をした場合には、もし底地の抵当権が実行された場合には借地人は対抗できないことによるためです。こうしたことから建物登記及び定期借地権設定登記を行なった後に、土地に対して借地人を債権者とする抵当権設定登記を行なうような手続きをとることが多いようです。なお、保証金返還請求権を担保するための抵当権に対して金融機関が質権を設定することも多いようです。詳細は金融機関を含めてご検討下さい。