土地の有効活用講座
定期借地権設定契約上の留意点(5回連載)

■その4 -- 中途解約について(2009.1.15掲載)
1)定期借地権における中途解約について

定期借地権が創設されたころに、当時の建設省等が中心となり、定期借地権設定契約の雛形を作成しました。その後も、定期借地権の進展に応じてより詳細な雛形等が作成され、当協議会のホームページにおいても、そうして作成された契約書の一部が定期借地契約の雛形として閲覧することができます。
ところで、当協議会の定期借地契約の雛形を見てみますと、「中途解約」に関しての項目が見当たりません。勿論、借地人が地代の不払いをしたりした場合には、契約が解除できる旨の条項はおいてありますし、借地人側におけるこうした背信行為がない限りにおいては、土地所有者は期間満了まで借地契約の終了を求めることはできません。すなわち、ここで問題としているのは、借地人サイドから中途解約をすることができるか否かという点です。
結論から申し上げましょう。定期借地権は、期限を定めた契約であるわけですから、その期間においては土地所有者は土地を貸し続ける義務がありますし、借地人も土地を借受ける義務があると考えられます。そのため、中途解約条項が入っていない定期借地契約の場合は、借地人側からも中途解約は原則として認められないと考えられます(勿論、この場合でも土地所有者が合意すれば問題ありませんが)。
2)中途解約の可能性

仮に50年の定期借地契約を設定したとして、借地人は当初は50年間にわたり当該地に居住する意向であっても、借地人を取り巻く事情が変化することもありますし、また相続等により当事者に変化が生じる可能性があります。こうした場合に、現在の住宅が必要でなくなると、通常は中古市場で売却をすることを検討すると思われますが、例えば借地権の残存期間が短い場合や、借りている土地が不人気な地区の土地である場合には、中古市場での転売も容易でない可能性があります。こうした場合を考えると、借地人サイドから考えると、催告の上一定の期間をおいた後に中途解約ができるような条項を入れる方が安心であるとも考えられます。
もっとも、中途解約を安易に認めることは、土地所有者側からすると、リスクになります。すなわち、「期待していた収入が入らなくなる」こととなりますし、もし、定期借地権設定契約に際して保証金の授受を受けていた場合には、保証金も返還しなければならなくなります。こうしたことを考えると、土地所有者サイドから見ると、「中途解約はないほうがよい」ということにもなります。
3)中途解約を想定する場合

中途解約については、借地人サイドに立つ場合と土地所有者サイドに建つ場合で考え方は大きく異なります。但し、こうしたことを鑑みた上で、中途解約を認める方向であるのであれば、契約の中で中途解約について取り決めをされておくほうが良いと思われます。例えば、「借地人は、土地所有者に書面で中途解約の申し出をしてから6ヶ月を経過したときに終了する」等の文言になると思われます。なお、中途解約の場合の建物の処理等についての取り決めも必要でしょう。