■第2回その1 -- 地上権と賃借権の違いは?(2008.10.15掲載)

私たちは、一般に、土地を借りる権利のことを「借地権」と呼んでおります。確かに土地を借りる権利ですから、この言い方は日本語としては間違っておりませんが、「法律」の面で考えると、いわゆる「借地権」とは「建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権」(借地借家法第一条)と定義付けされております。
すなわち、借地借家法で保護される「借地権」とは、「建物所有目的」であることから、例えば駐車場や資材置き場等は、この場合の借地権には該当しないこととなります。この部分は非常にわかりやすい概念ですが、では建物所有目的の「地上権」或いは建物所有目的の「土地の賃借権」とは一体どのような意味なのでしょうか?

民法上地上権は「物権」に、賃借権は「債権」に分類されます。
債権とは、平たく言えば「契約による権利」となりますし、「物権」とは「物の支配にかかる権利」(誤解を恐れずにいうならば、所有権に準じる権利といっても良いかもしれません)とされます。そのため、権利としては、物権である地上権のほうが、債権である賃借権よりも、借地人サイドからみるとより強い権利であるということがいえます。もっとも、借地権にかかる長い歴史の中で、主として借地人の保護が図られた結果、借地借家法上では、地上権も賃借権も大きな違いがなくなってきております。
現状では、建物所有目的の賃借権と地上権の違いは以下の点くらいではないかと思われます。

 1. 地上権には抵当権が設定できるが賃借権には抵当権が設定できない。
 2. 地上権者は特に賃料の支払い義務はないが、賃借権は「賃料を支払って土地を借りる権利」であることを考えると賃料の支払いは不可欠である。
 3. 地上権は登記移転請求ができるが、賃借権の場合は土地所有者の協力がないと登記ができない。

このうち、<2>について考えると、土地所有者は「固定資産税・都市計画税」を支払う必要がある(期間100年を超える地上権の場合を除く)ことから、地上権を設定した場合でも現実には権利金の支払いのみで地代を支払わないというケースは殆どないと思われます。
こうしたことから、大きな違いとは思われませんし、<3>についても、定期借地権の場合は、設定されている借地権が普通借地権ではなく定期借地権であることを第三者に示す意味から考えると、土地所有者も積極的に登記に協力しているようですから、大きな違いは<1>の部分であると申し上げられるでしょう。