■その2 -- 土地活用手法としての定期借地権のポジション(2008.8.18掲載)

【1】通常の土地活用の分類
一般的な土地を、土地所有者が活用の検討をする場合には、活用手法は、「賃貸住宅の建設」・「駐車場経営」・「定期借地権分譲」のいずれかの選択になるケースがほとんどです。勿論、土地が商業地にあったりする場合には、「貸店舗」や「オフィスビル経営」も可能となりますが、これらに適している土地はあまり多くありません。
では、これらの中でどの活用手法が地権者にとって有利な手法となるのでしょうか?現実には、これは、所有地の特性や土地所有者の目的等によっても異なりますので、信頼できるコンサルタント等と十分な検討を行った上で判断をされる必要があるでしょう。

【2】賃貸住宅・駐車場・定期借地権の比較
世の中には、「完璧な土地活用手法」は、残念ながら存在しません。いずれの事業手法にも、必ず、「メリット」と「デメリット」が存在します。
なお、一般的なメリット・デメリットも土地所有者の状況によっては、重みも異なることがありますので、土地所有者の立場で考えると、事業内容をよく理解した上で判断をされる必要があるでしょう。
一般的に、この3つの手法について、セミナーや書籍等で様々な比較がなされておりますが、厳密には、上でも述べたように、土地状況や土地所有者を取り巻く環境等でケースバイケースであることをご理解いただく必要があるでしょう。
なお、土地所有者を取り巻く状況は様々ですから、ここでは、土地について地価と家賃面から2つのパターンでの比較を行ないます。

a)高地価・高家賃地区
  相続税対策 遺産分割 保有税 収益性 安定性
節税面 納税面
賃貸住宅
駐車場 × ×
定期借地権 ○~△

相続税の節税面では、一般的には賃貸住宅が、一番効果があるといわれております。
定期借地権については、別項で詳細の説明をいたしますが、一定の土地の評価の軽減効果がありますが、借地権設定時に授受する「一時金」を保証金方式とした場合には、預託を受けた保証金の金額と、借地期間満了時に借地人に返還する債務相当額の差額分だけは、相続財産に加算されてしまうこととなります。
そのため、例えば定期借地権の設定によって底地評価が35%減っても、保証金にかかる債務を控除した残額が地価の15%分に相当する場合には、相続税の節税効果は結果的に地価の20%相当ということとなってしまいます。
なお、高家賃地区の場合には、建築資金を全額借入でまかなうケースでも、賃貸住宅経営の収益性は高く、定期借地権と比較した場合には大きな差が生じます。ただし、定期借地権で授受された保証金で、別の土地に賃貸住宅を建築する、或いは既存の債務の返済をすることで、相対的な収益性を高めることができるケースもあります。
このあたりの具体例は、後日紹介させていただきます。

b)中地価・中家賃地区
  相続税対策 遺産分割 保有税 収益性 安定性
節税面 納税面
賃貸住宅
駐車場 × ×
定期借地権 ○~△

次に、大都市郊外部や地方中核都市等を想定した場合ですが、この場合は賃貸住宅経営の収益性はa)の場合よりも悪化します。特に、建築価格が上昇する局面になると、投資利回りも大きく損なわれますし、借入金をベースに賃貸住宅の建築をする場合には、実質的な賃料は定期借地権の場合と大きな差はなくなります。
以上で見てきましたように、土地の属性や土地所有者の計画目的及び資産状況等により、どのような活用法が最適であるかは異なります。
そのため、信頼できる専門家等とよく協議の上、土地所有者ご自身とって、最適な活用手法は何かをよく吟味してみてください。
その中で、定期借地権について具体的に検討をしたい等の意向がおありの場合には、当協議会にご相談いただけたら幸いです。