■第2回その2 -- 既存の定期借地権の現状(2008.11.4掲載)

国土交通省による定期借地権の実態調査(以下「実態調査」という。)を見ると、住宅所有目的の定期借地権の場合では、「一戸建て住宅用の定期借地権」と「マンション向けの定期借地権」の場合で、顕著な違いを見ることができます。
まず、一戸建て住宅の定期借地権においては、「賃借権」型を採用する場合が殆どであり、「地上権」を採用するケースは殆どありません。実態調査では、平成19年末までの総供給戸数26,389戸(約11.9%)の中で、賃借権のケースが21,464戸(約81.4%)であるのに対して地上権のケースは3,150となっております(他に不明が1,775戸あります)。
一方で、マンションの場合は、平成19年末までの総供給戸数16,574戸に対して、地上権が9,203戸(約61.6%)であるのに対して、賃借権は5,733戸(約38.4%)となっております(他に不明が1,638戸あります)。定借マンションの場合は、地上権型が寧ろ主流であるということができます。もっとも、定借マンションについても、平成6年・7年あたりの初期の時点では、私の記憶では殆どが賃借権を採用していたように思います。寧ろ、供給が進むにつれて、地上権型の定期借地権を採用するケースが増えてきたのではないかと考えます。

一戸建て住宅とマンションでこうした違いが生じている正確な理由はわかりません。但し、一戸建て住宅の定期借地権については、特に規模が大きくないケースでは、個人地主が所有しているケースが多い模様ですが、一方で定借マンションの場合は、地主は法人のケースがかなり多くなります。
こうした土地所有者の属性等も、多少は関係しているのでしょうか?もっとも、定期借地権の企画を進めている場合に、相談を受けている事業者の側でも、賃借権とか地上権という問題はあまり意識していない可能性も考えられ、結果として、従来から利用されていた賃借権を選択されているだけなのかもしれません。

因みに、借地権設定時に授受する一時金で見てみると、一戸建て定借の場合は、保証金タイプが3,136団地(93.4%)、権利金タイプが84団地(2.5%)、他は前払い賃料や併用タイプとなっております。
これに対して定借マンションの場合は、保証金タイプが145団地(40.6%)、権利金タイプが126団地(35.3%)、他は前払い賃料や併用タイプ等となっております(一時金の分類は、戸数ベースではなく団地ベースとなっております)。

以上の数値のみから考えると、一戸建て定借の場合は、権利関係は賃借権型で一時金は保証金タイプが現状におけるプロトタイプと考えることができます。
一方で定借マンションは、様々なバリエーションがある(地上権で権利金型、地上権で保証金型、賃借権で保証金型等)と考えることもできるでしょう。